各種電動機の特徴(利点、欠点)について 電動機と一言でくくっても、小は極小モータから大は発電用発電電動機まであります。 此処では一般的なkW級電動機で、200V級及び400V級、三相電動機の場合で記載します。 内容に関しての責任は負えません。 結論から先に申し上げますと、21世紀の現在、ベクトル制御インバータ+籠形誘導電動機が万能で、他の電動機は尽く駆逐されつつあります。 ベクトル制御インバータ+籠形誘導電動機を使うと、速度制御も自由自在ですし、省エネルギにもなります。 ですから、優劣もヘッタクレも無く、誘導電動機で決まりです。 籠型誘導電動機の特徴 【良い所】 1.丈夫 構造が簡単な為に非常に丈夫です。 構造上、スリップリングやブラシが無いために、事実上消耗する所は軸受けのベアリング部分だけになります。 従って、メンテナンスが楽で事実上ホッタラカシでも大きく問題になることはありません。 2.価格が安い 同じ軸出力の電動機同士を比較すると、恐らく誘導電動機が一番安いと思います。 安い=安物ではありません。 凝った造りのものが良いとは限りません。 簡単な構造で、高品質のものが一番良いのです。 3.品揃えが豊富 量産効果の結果だと思いますが、0.2kW〜132kW程度までは汎用品が揃っています。 4.商用電源で運転可能 当たり前の話ですが、商用電源に接続すれば動きます。 直流機は直流電源が必要です。 商用電源は交流です。 ですから、簡単な発停装置(マグネットスイッチ)で発停が可能です。 5.無負荷運転が可能 意外と見落とされがちですが、誘導電動機は無負荷運転が可能です。 6.回転速度がほぼ一定 電源周波数が一定の場合の話です。 一般的に誘導電動機は停動トルク発生回転以上〜同期回転以下の回転領域で使用します。 通常は停動トルク発生回転が同期回転数の70〜80%程度(滑り=20〜30%)、定格回転数は同期回転の94〜97%程度(滑り=3〜6%)、の回転数で使用します。 回転数が下がると、トルクは増加し、上がると減少します。 これは、回転の安定度に非常に関係します。安定度は非常に良い電動機です。 負荷のトルクが多少暴れても、回転数は1〜2%程度変わるだけで、事実上定回転と見なすことが出来ます。 【悪い所】 1.力率が悪い 磁気回路が構造上エアギャップを通過するので、励磁電流が沢山流れます。 概ね定格時に80%(遅れ)程度です。 これは、コンデンサを設置することで補償出来ますし、インバータ駆動の場合はインバータで力率改善が出来ますので、この欠点は克服されています。 2.起動時に突入電流が流れる 突入電流は概ね定格電流の6倍で10秒間流れます。 これをそのままにしておくと、徒に大きな電源容量を必要とすることになりますので、始動方式を工夫して改善しています。 インバータ駆動の場合は、事実上この突入電流がありません。 3.速度制御が出来ない 原理的に定回転電動機ですから、速度を変えて回すことは出来ません。 インバータが無かった時代には、極変換電動機(ポールチェンジモータ)と言って16〜2極に極数を変換して回転数を変えていました。 この方式ですと、回転数の変化がステップ状になりますので、連続可変速にはなりません。 インバータが出現してからは、この欠点は克服されました。 又、可変速度を必要としない場合は、可変速度制御が出来ないことは欠点になりません。 (世の中可変速制御が必要なものは意外と少ない。ファンやポンプは馬鹿運転でOKの場合が多い。) 巻線型誘導電動機の特徴 これは二次巻線を籠形とせずに、三相巻線を施したものです。 【良い所】 1.始動特性を改善出来る。 構造上二次回路に外部抵抗を接続出来るので、始動特性を改善出来ます。 大きな抵抗器や小さな抵抗器を色々繋ぎ変えて、始動トルクを大きくしたり、始動電流を押さえる事が出来ます。 又、トルク特性が変わりますので、回転数をある程度制御することもできます。 インバータが出てきて、このメリットは余り有り難く無くなってしまいました。 【悪い所】 1.ブラシとスリップリングが必要 これは致命的な欠点になりかねません。 メンテナンスも厄介ですし、スリップリングとブラシの接触部(しゅうどう部と言う)が接触不良を起こすと、欠相運転となり、クローリングが起きたりします。 インバータの出現により、多分、前近代的異物になりつつあると思います。 直流直巻電動機の特徴 コレは界磁巻線と電機子巻線を直列に接続したものです。 【良い所】 1.始動トルクが大きい 最大トルクが回転数=0の時点で得られますので、大きな起動トルクを必要とする負荷に適用出来ます。 2.可変速に出来る。 加える電圧を可変にすることにより、回転数を制御出来ます。 ですから、昔の電車は新幹線を含めてこの電動機(の改良型)を使っていました。 【悪い所】 1.無負荷運転が出来ない 界磁回路と電機子回路が直列に接続されていますので、無負荷時には電流が限りなくゼロに近くなります。 従って、界磁磁束が限りなくゼロに近づきますので、回転数が著しく上昇します。 無負荷運転をすると、過回転により電動機が爆発的に壊れます。 もの凄く危険です。 この危険性を回避するために、別途界磁巻線を施し、無負荷時でもゼロ励磁にならないような工夫が成されています。(複巻電動機と言う。) 2.ブラシとスリップリングが必要 直流機の宿命です。 どうにもなりません。 3.直流電源装置が必要 当たり前の話ですが、商用電源はそのままでは使えません。 整流器を通して、直流に変換する必要が有ります。 コスト高の要因となります。 コレも直流機の宿命です。 直流分巻電動機又は直流他励磁電動機 原理的に同じものと考えて良いと思います。 界磁回路と電機子回路が独立しています。 【良い所】 界磁回路と電機子が独立していますので、制御を細かくすることが出来ます。 励磁電流を調節することにより回転数を可変に出来ます。 (電流大:回転数低 電流小:回転数高) 電機子電流を調節することによりトルクを可変に出来ます。 (電流大:トルク大 電流小:トルク小) 嘗ては可変速の電動機の主役でした。 【悪い所】 界磁回路が喪失すると、過回転により電動機が爆発敵に壊れます。 その他、直巻機と同様の欠点が有ります。 同期電動機 これは誘導電動機の回転子を磁石にしたものです。 名前の通り、同期回転以外では回りません。 【良い所】 1.同期回転で回る これは欠点でも有るのですが、同期回転以外では原理的に回りませんので、厳密な定回転が必要な装置等に用いられます。 一般的に、非常に大きなもの(揚水発電所の発電電動機、50万kW位のものが有る。)か非常に小さなもの(電気時計の電動機)の両極端になります。 【悪い所】 1.回転子を磁石にするために直流電源が必要。 従って、自動的にスリップリングとブラシが必要になります。 最近になって、回転子に永久磁石を用いるものが出て来ました。 PMモータと言います。(PM=永久磁石permanent magnet) コレを用いると回転子の直流励磁が不要になりますので、ブラシとスリップリングが不要になります。 以上 |
以下はsaruさんのご投稿です 【直流機】 特徴:1)直流駆動、2)電機子電流と界磁電流を別々に制御可能 長所: 1→電池で駆動可能=小型電動機、非常電動機に利用される 2→速度制御・トルク制御が容易 電車や工場で広く用いられていた(インバータが普及するまでは・・) 短所: 1→整流子を持つため定期的な手入れや交換が必要(保全コスト高い) →商用電源を使う場合、交直変換器(レオナード)が必要 おまけ 2→電動機の理論的な解析の勉強になるので電験3種によく出る 【誘導機】 特徴:1)回転子には誘導電流が流れる=界磁電源が不要なので構造が簡単 2)回転子は同期速度から遅れて回転する(すべり) 3)インバータを使うことで精密な速度制御が可能となった 長所: 1→製作費、保守費が安価で経済的 =回転数制御が不要な駆動源としてよく使われている 3→高出力可能なインバータが普及したため 従来直流機が使用されていた高度な産業用電動機として利用範囲が広がった 短所: 1→始動時に大きな突入電流が流れる (大型機ではΔY始動を始め、各種起動方式が採用される) 2→負荷が変動すると回転速度が変動する 3→インバータによる高調波が生じる おまけ: 世間で最もよく利用されているので電験2種1種によく出る 等価回路を使った計算問題、各種始動方式、インバータの原理と種類など 発電機としては風力発電用として利用される(風力のゆらぎをすべりで吸収できるから) 【同期機】 特徴:1)直流励磁、2)回転磁界による同期速度で回転する 長所: 1→励磁調整により力率を自由に調整可能 2→負荷が変動しても回転速度が変動しない 短所: 1→界磁用のブラシが必要なので定期的な手入れや交換が必要(保全コスト高い) 2→始動や同期引入に付加的な装置が必要となる おまけ 2→電動機として使われることは少ないので電験への出題は少ない。 発電機としては数多く使用されているので電験2種1種によく出る 以上 あくまでも一般的な説明だから特殊品では例外もあります。 |