分路リアクトルの電圧調整効果について
電力系統を運転してゆくなかで電圧の調整は欠かせないものです。
電圧調整の一つとして分路リアクトル(ShR)を使った方法があります。
ここではその電圧調整効果について計算式を使って説明いたします。
モデル系統

左の図がモデル系統です。赤字で書いてある数字は10MVA基準のパーセントインピーダンスです。
この変電所は500kV/220kV/110kVの連系変電所であり、つながっている変電所すべての背後には電源があるものとします。
そしてこの変電所の110kV母線に50MVAの分路リアクトル(ShR)を接続した場合にどのような電圧調整効果が得られるか説明したいと思います。
電圧変化の簡易式はすでに説明させていただいた通り
ΔV=x・ΔQ
となっていますが、これは単に送電端電圧と受電端電圧の電圧差を求める式の簡略式であります。
今回のような系統では送電端は複数あり、受電端は変圧器を介した2次側の母線でありまた受電端にも電源があるという事から
単純にはこの式を使えそうにないのですが、%Zおよび分路リアクトルの容量を同一基準で統一された数値を用いれば電圧階級
に関係なく計算でき、電圧変化ΔVについては基準電圧に対する変化の割合(電圧変動率)が求まるためこの式で計算できます。
では、上の電力系統図を簡略化して以下の図のように書き換えます。
では実際に計算していきます。
各インピーダンスを10MVA基準の【PU】で表すと
・%Z1=0.0308×1/100=0.000308 【PU】
・%Z2=0.739×1/100=0.00739 【PU】
・%Zt=0.155×1/100=0.00155 【PU】
・ShRの容量=50/10=5 【PU】
分路リアクトル投入時の無効電力QLは両端の電源より供給されるが、その無効潮流は110kV母線からみたインピーダンスの
逆比によって配分される。よって上位系より供給される無効潮流Q1は以下のようにして求まる。
従ってShR投入時の上位系から供給される無効潮流は3.995【PU】(=39.95MVA)となり
500kV母線の電圧変動率ΔV500及び110kV母線の電圧変動率ΔV110は
ΔV500=Q1×Z1=3.995×0.000308=0.00123【PU】
ΔV110=QL×Z110=5×0.0014847=0.00742【PU】
※Z110:110kV母線からみたバックインピーダンス
従って
500kV母線の電圧変動率は0.123(%)
110kV母線の電圧変動率は0.742(%)
となりました。
また、本計算での基準電圧はそれぞれ「500kV」「110kV」であるため各母線での電圧変化は、
ΔV500=500kV×0.00123=615(V)
ΔV110=110kV×0.00742=816.2(V)
であると言えます。
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